朝、布団から出て最初の一歩を踏み出した瞬間、かかとにズキッと痛みが走る。
しばらく歩いていると少し楽になるものの、翌朝にはまた同じ痛みが出る。
足底筋膜炎と言われ、湿布やインソールなどを試してきた。それでも何ヶ月も痛みが変わらない。
こうした場合、足底筋膜炎(足底腱膜炎)が長引いている可能性だけでなく、かかとの感覚を担う神経が関係している可能性にも目を向ける必要がある。
その一つが、内側踵骨枝(ないそくしょうこつし)という神経である。
朝の一歩目が痛いのは、足底筋膜炎だけ?
朝起きて最初の一歩を踏み出したときや、長時間座った後の歩き始めにかかとが痛む。
これは足底筋膜炎に特徴的な症状である。
足底腱膜は、かかとの骨から足の指の付け根に向かって広がる丈夫な組織で、土踏まずを支える役割を持っている。
この組織に負担がかかると、かかとの足底側、特に内側寄りに痛みが現れることがある。
ただし、朝の一歩目が痛いという特徴だけで、原因を確定することはできない。
神経の問題でも、足をついたときに痛みが現れる場合がある。また、足底腱膜と神経の両方が症状に関係している可能性もある。
そのため、痛みが長引いている場合には、足底腱膜以外の組織も確認することが重要になる。
かかとの内側には、痛みや感覚を伝える神経がある
かかとの内側から足底側には、内側踵骨枝(ないそくしょうこつし)という細い神経が分布している。
内側踵骨枝は、主に脛骨神経(けいこつしんけい)から枝分かれする感覚神経である。
脛骨神経は、ふくらはぎの奥を通り、内くるぶしの後方を経由して足の裏へ向かっている。
その途中で分かれた内側踵骨枝が、かかとの内側や足底側の皮膚感覚を担っている。
この神経が刺激を受けると、かかとの内側に痛みやしびれ、ピリピリとした違和感が現れることがある。
ただし、かかとの内側は足底腱膜の付着部にも近いため、痛む場所だけで足底筋膜炎と神経の問題を区別することはできない。
内側踵骨枝は、人によって分かれる場所が違う
ここで重要なのが、内側踵骨枝の解剖学的な個人差である。
内くるぶしの後方には、足根管(そっこんかん)と呼ばれる狭い通り道がある。
この中を脛骨神経や血管、複数の筋肉の腱が通っている。
内側踵骨枝は、足根管に入る手前で枝分かれする場合もあれば、足根管の内部やその近くで分かれる場合もある。
さらに、枝が一本とは限らず、複数に分かれている場合もある。
つまり、同じようにかかとの内側が痛んでいても、神経の通り道は必ずしも同じではない。
ある人では足根管より手前の部分が関係し、別の人では足根管周辺が関係している可能性もある。
この違いは、かかとの痛みを神経という視点から評価するときに見落としたくない点である。
足底筋膜炎と神経の痛みを見分ける手がかり
足底筋膜炎と神経の痛みは、症状が似ていることがある。
そのため、痛みの場所だけでなく、感じ方にも注目する。
足底筋膜炎でよく見られる特徴
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朝の一歩目や歩き始めに痛む
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かかとの足底側、特に内側寄りが痛む
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長時間の立位や歩行で痛みが強くなる
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かかとの特定の場所を押すと痛みが再現される
神経の関与を考える手がかり
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ピリピリ、ジンジンとした感覚がある
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焼けるような痛みを感じる
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痛みとともにしびれがある
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軽く触れただけでも不快に感じる
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刺激した場所から離れたところに痛みが響く
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安静にしていても違和感が残る
ただし、これらはあくまで手がかりである。
神経の問題があっても必ずしびれが出るわけではなく、症状だけで原因を決めることはできない。
足根菅症候群との関係
足根管症候群は、内くるぶしの後方にある足根管で脛骨神経やその枝が圧迫され、主に足の裏や足の指に痛み、しびれなどが現れる状態である。
内側踵骨枝がどこで枝分かれしているかによっては、かかとにも症状が現れる。
そのため、足根管症候群とかかとの神経の痛みは、完全に切り離して考えられるものではない。
また、かかとの痛みには、バクスター神経と呼ばれる別の神経が関係する場合もある。
足底筋膜炎が長引くとき、かかと以外も確認する理由
かかとの痛みが何ヶ月も続く場合、その理由は一つではない。
足底腱膜への負担が続いている場合もあれば、かかとの脂肪体や骨、神経など、別の組織が関係している場合もある。
神経の関与を考えるときには、かかとだけでなく、ふくらはぎや足首の状態にも目を向ける。
脛骨神経は、ふくらはぎの深い部分を通り、足根管へ向かっている。
足根管の周辺には、後脛骨筋(こうけいこつきん)、長趾屈筋(ちょうしくっきん)、
長母趾屈筋(ちょうぼしくっきん)などの腱も通っている。
また、足の内側には母趾外転筋という筋肉があり、その周辺を足底へ向かう神経の枝が走行している。
こうした筋肉や腱、神経は、足首や足部の動きと関係している。
そのため、痛む場所だけでなく、足首の動きや筋肉の働きを確認することにも意味がある。
ただし、筋肉が硬いことだけで神経が圧迫されているとは判断できない。
神経が関与しているか、どうやって調べる?
神経の関与を考える場合、痛みの場所に加えて、感覚や刺激に対する反応を確認することがある。
ティネル徴候
神経の通り道を軽く叩いたとき、電気が走るような感覚や、離れた場所へのしびれが現れることがある。
これをティネル徴候と呼ぶ。
内くるぶしの後方などを調べ、どこへの刺激で、どの範囲に症状が響くかを確認する。
ただし、ティネル徴候だけで神経の障害や分岐位置を確定することはできない。
痛覚や触覚の左右差
左右のかかとに同じような刺激を加え、感じ方に違いがあるかを調べることもある。
痛む側の方が強く感じる場合もあれば、反対に鈍く感じる場合もある。
こうした感覚の変化は、神経系の働きを評価する手がかりになる。
ただし、感覚の違いだけで、障害の原因や進行度を判断できるわけではない。
痛みが始まった場所と経過
最初はかかとの内側だけが痛かったのか。
その後、足の裏や指に症状が広がったのか。
痛みだけだったところに、しびれが加わったのか。
現在の症状だけでなく、こうした経過を確認することも重要である。
かかとの痛みに対して、強い刺激が必要とは限らない
かかとの痛みが続くと、痛む場所を強く押したり、足の裏を繰り返し刺激したりすることがある。
しかし、足の裏には多くの神経が分布している。
特に神経が過敏になっている場合には、強い刺激によって症状が悪化することもある。
かかとに痛みがあるからといって、かかとだけを強く刺激すればよいわけではない。
痛みの場所、感覚の変化、足首や足部の動きなどを確認し、身体の状態に合わせて対応を考える必要がある。
また、足首や足部の位置を感じ取る働きも、立つ、歩く、バランスを取るといった動作に関係している。
こうした感覚や動作の評価も、身体の状態を把握するための一つの視点になる。
こんな場合は医療機関で確認を
かかとの痛みが何ヶ月も続く場合や、対処を続けても改善が見られない場合には、整形外科などで改めて評価を受けることが大切である。
特に、強い腫れや熱感がある場合、急に体重をかけられなくなった場合、足の感覚が明らかに低下している場合には注意が必要になる。
足や指の力が急に入りにくくなったり、しびれが急速に広がったりする場合には、速やかな医療機関での評価が必要である。
まとめ|足底筋膜炎が治らないときは、神経という視点も
朝の一歩目にかかとが痛む。
足底筋膜炎と言われて対処を続けているのに、何ヶ月も変わらない。
そんなとき、足底腱膜以外の組織が関係している可能性も考えられる。
かかとの内側には、内側踵骨枝という感覚神経がある。
この神経は人によって枝分かれする場所が異なり、同じかかとの痛みでも、関係する場所が違う可能性がある。
ただし、痛みの場所や質だけで原因を決めつけることはできない。
「足底筋膜炎のはずなのに、なかなか変わらない」
その違和感は、かかとの痛みを神経という別の角度から見直すきっかけになるかもしれない。
かかとの痛みが長引いている場合、痛む場所だけでなく、神経の感覚や足首・足部の働きまで含めて確認するという選択肢もある。
