キネシオテーピングスーパートレーニングに参加して
8月2日、KTスーパートレーニングの講義に参加してきた。
今回も、一般向けに販売されているテーピングの書籍を教材にしながら、そこに書かれている貼り方を実際の身体にどう応用するのかを学ぶ内容であった。
テーピングの本には、身体の部位ごとに基本となる貼り方が紹介されている。
しかし実際の臨床では、同じ場所が痛いからといって、全員に同じテープを貼ればよいわけではない。
- 筋肉が硬いのか
- 伸ばされ続けているのか
- 関節が不安定なのか
- 骨の位置がわずかにずれているのか
- 皮膚や筋膜が内側から押され、動くための余裕を失っているのか
今回の講義では、こうした身体の状態を確認しながら、テープを選ぶまでの考え方を学んだ。
背骨に長く貼ればよいわけではない
講義の冒頭では、前回扱った背骨へのテーピングを振り返った。
背骨に沿ってテープを貼り、その前後で肩の力、前屈、身体の回転、脚の上がり方などを確認する。
実際に貼ると、肩に力が入りやすくなったり、前屈しやすくなったりすることがある。
一方で、腰だけにテープを貼ったところ、複数の筋肉検査で力が入りにくくなった例もあった。
症状は軽くなっていても、身体の動きとしては不自然になることがある。
この結果からも、テープは長く貼れば効く、広く貼れば効く、というものではないことが分かる。
身体の後ろ側が動きやすくなっても、前側に圧力やつっぱりが残っていれば、別の場所で動きが止まる場合がある。
そのため、貼る前後では痛みだけでなく、
- 力が入りやすくなったか
- 動きが滑らかになったか
- 別の場所に負担が移っていないか
まで確認する必要がある。
症状が取れたことと、身体全体がよい状態になったことは、必ずしも同じではないのである。
硬いから伸ばす、緩めるとは限らない
太ももの裏側にあるハムストリングスについても、前回の内容を振り返った。
ハムストリングスは「硬い筋肉」として扱われることが多く、ストレッチやマッサージの対象になりやすい。
しかし実際には、筋肉が縮んで硬くなっているのではなく、日常的に引き伸ばされながら働いている場合がある。
さらに、張っているのが筋肉そのものとは限らない。
皮膚や浅い筋膜が、その下の組織と一緒に張りついたように動いていることもある。
講義では、皮膚をつまみ、その厚みや動き方を確認した。
ふんわりとつまめるのか。 薄く張りつき、皮膚だけを持ち上げられないのか。
この違いによっても、選ぶテープは変わる。
筋肉そのものを助けた方がよい場合もあれば、まず表面の皮膚や筋膜にゆとりを作った方がよい場合もある。
「張っているから緩める」 「硬いから伸ばす」
という一方向の判断では、かえって身体を不安定にすることがある。
その筋肉が縮みすぎているのか、それとも伸ばされながら踏ん張っているのかを見極めなければならない。
筋肉は骨についている
今回の講義で特に印象に残ったのは、筋肉だけを見るのではなく、骨の位置を確認するという考え方である。
筋肉は単独で宙に浮いているわけではない。必ず骨に付着し、骨と骨の位置関係に合わせて伸び縮みしている。
そのため、骨がわずかに前や外へ出た状態になると、その上を覆う筋肉や筋膜は内側から押し上げられる。
表面から触れると、筋肉が硬く盛り上がっているように感じることもある。
一般的には、その盛り上がりを「筋肉のこり」と考えて揉みたくなる。
しかし実際には、筋肉が自ら縮んで盛り上がっているのではなく、骨の位置によって押し出されていることがある。
この場合、表面だけを揉んでも根本的な圧力は変わらない。
講義では、肩や腕、脚などで、わずかに出っ張っている場所を探し、その位置を適切な方向へ整える実習を行った。
すると、その場で筋力検査の反応が変わったり、腕が上げやすくなったり、押したときの痛みが軽くなったりする場面があった。
これは「骨を強く動かせばよい」という話ではない。
重要なのは、なぜ表面が張っているのかを考えることである。
筋肉を揉む前に、骨の位置や、その周囲の圧力まで見る必要がある。
身体が動くためには、わずかな隙間が必要である
講義では、身体の中にある「隙間」という言葉が何度も使われた。
ここでいう隙間とは、関節を大きく開くという意味ではない。
皮膚、筋膜、筋肉、腱、骨などが、それぞれわずかに滑りながら動くための余裕である。
身体の組織は、完全に固まった一枚板ではない。皮膚は皮膚として動き、筋膜は筋膜として滑り、その下で筋肉が伸び縮みする。
ところが、内側から骨や組織に押され続けたり、同じ場所に圧力が集中したりすると、この小さな隙間が失われる。
隙間がなくなると、
- 皮膚や筋膜が滑りにくくなる
- 筋肉が縮みにくくなる
- 関節が動きにくくなる
- 力が入りにくくなる
- 圧迫された部分に水分が行き渡りにくくなる
といった変化が起こり得る。
キネシオテープの役割の一つは、この動くための余裕を作ることである。
ただし、どこにでも隙間を作ればよいわけではない。
もともと緩みすぎて不安定になっている場所を、さらに緩めれば、かえって力が入らなくなる可能性がある。
必要な場所にはゆとりを作り、支えが必要な場所には支えを加える。
その判断をするために、貼る前後の検査が欠かせない。
痛い場所が原因とは限らない
身体の中では、ある場所が動きにくくなると、別の場所が代わりに動く。
ある筋肉が支えられなくなると、別の筋肉が代わりに緊張する。
そのため、痛い場所を見つけて緩めても、負担の原因が残っていれば、今度は違う場所が痛くなることがある。
痛みが移動することを、すべて悪化と捉える必要はない。
これまで負担を引き受けていた場所が変わり、別の場所に隠れていた問題が表面化した可能性もある。
大切なのは、その都度、痛い場所だけを追いかけないことである。
- どの動きで痛むのか
- どこで力が止まるのか
- 骨の位置を変えると、押した痛みが変わるのか
- 離れた場所を調整すると、動きが変わるのか
こうした確認を重ねて、身体全体のつながりを見ていく。
テープを貼ることが目的ではない
テーピングの講義というと、きれいな貼り方や、新しい貼り方を覚える場だと思われるかもしれない。
もちろん、テープを正しく貼る技術は必要である。
しかし今回も、講義の中心にあったのは貼り方そのものではなかった。
テープを選ぶ前に、何を確認するのか。 貼った後に、何が変わったのか。 変化がなければ、どこを見直すのか。
むしろ、その見極めに多くの時間が使われていた。
どれだけきれいに貼れても、身体の状態に合っていなければ意味がない。
一方で、短いテープ一枚でも、必要な場所と方向が合えば、力の入り方や動きが変わることがある。
テープは身体を無理に動かすものではない。身体が本来使いたかった方向へ戻るための、きっかけを作るものである。
今回の学びを臨床に活かす
痛い場所だけに施術を行うのではなく、痛みやしびれがなぜそこに集中しているのかを確認する。
これは、これまでも大切にしてきた視点である。
筋肉が硬いように見えても、単純に緩めればよいとは限らない。
骨の位置によって押し出されていることもあれば、関節を守るために緊張していることもある。皮膚や筋膜が動ける余裕を失っていることもある。反対に、緩みすぎた場所を支えるために、周囲の筋肉が頑張り続けていることもある。
今回学んだ、
- 痛みだけでなく力や動きを確認する
- 筋肉と骨の位置を一緒に見る
- 組織が動ける隙間を探す
- 緩めるのか支えるのかを見極める
- テープ前後で必ず反応を比較する
という考え方を、今後の施術にも活かしていきたい。
同じ場所に何度も症状が出るとき、そこだけが悪いとは限らない。
表面に出ている痛みの奥で、身体がどのように支え、どこで動きを止めているのか。
それを丁寧に確認することが、症状を繰り返さない身体づくりにつながると考えている。
