第43回キネシオテーピング学術臨床大会(仙台)報告
2026年10月25日、仙台で第43回キネシオテーピング学術臨床大会が開かれた。
私もワークショップの講師として登壇した。
テーマの中心にあったのは、「キネシオテーピングとは何か」という問い。
会長講演、アナトミートレインのゲスト講演、そして私が担当したワークショップ。
その内容と、現場で感じたことをまとめておきたい。
第43回キネシオテーピング学術臨床大会では何が発表されたのか?
発表の舞台は、病院のリハビリからスポーツ現場までさまざま。
同じ貼り方でも、反応は人によって違う。
だからこそ、貼った後に確かめる。
この視点が、大会全体を通して重要なテーマの一つとなっていた。
キネシオテーピングを一言で説明できるのか?
会長講演の出発点は、ある研修会で出た問いだった。
「キネシオテーピングとは何か。一言で答えられるか」
答えは、実は難しい。
習った時期や、教わった相手によって説明が少しずつ違うからである。
なぜ説明が人によって違うのか?
キネシオテーピングは長い年月をかけて、国内外に広まってきた。
その過程で、教わった時期や相手によって、説明が少しずつ変わっていった。
「キネシオテープ」という言葉も、今では伸縮テープ全般を指すようになっている。
テープを貼れば筋力が上がるのか?
よく耳にする「筋力アップのテープ」。
実は、本来そうした説明はされていない。
貼る前に行う筋肉テストは、力の強さを測るものではない。
どこに貼るかを探すための検査である。
テープで変わらない痛みもあるのか?
膝が痛い。テープを貼っても、なぜか変わらない。
そんなとき、裏に内科的な病気が隠れていることがある。
姿勢や使いすぎだけでは説明できない不調もある。
目に見える原因だけを追わない。
この考え方は、協会が今回まとめた教材『キネシオ・ザ・インスパイア』にも込められている。
アナトミートレインの知見はどこまでアップデートされたのか?
ゲスト講演は、『アナトミー・トレイン』日本語版の翻訳を担ってきた板場英行先生。
アナトミートレインは、全身の筋膜のつながりを鉄道の路線に見立てた考え方である。
痛む場所だけでなく、離れた場所の硬さが関係している可能性を探るときに役立つ。
私自身、『アナトミー・トレイン』は第3版まで読み込み、施術に取り入れてきた。
今回の講演で、その理解がいくつか更新された。
体のつながりは、すべて証明されているのか?
アナトミートレインでは、全身に12本のつながりが描かれている。
研究が進むと、裏付けが強いものと、まだ確かめられていないものがあると分かってきた。
筋膜リリースで、膜は伸びているのか?
手で筋膜そのものを大きく伸ばすのは難しい、という研究が出てきた。
代わりに注目されているのが、神経への刺激である。
筋膜には、触れられた感覚を受け取るセンサーがたくさんある。
そこへの刺激が、体の変化につながっていると考えられている。
皮膚に貼るだけのテープで体が変わる理由を考えるうえでも、ヒントになる話である。
矯正の前にテープで首は変わるのか?私のワークショップを振り返る
大会の後半、私はカイロプラクティックとキネシオテーピングを組み合わせたワークショップを担当した。
テーマは、「矯正をしなくても、テープだけで首の歪みは変わるのか」。
会場で実際に確かめてもらうことにした。
なぜ「矯正より先にテープ」なのか?
カイロプラクターになって25年。
ずっと引っかかっていたことがある。
矯正をすると、その場は楽になる。
けれど、しばらくすると元に戻ってしまう方が少なくない。
戻らない体にするには、どうしたらいいのか。
その答えを探して、キネシオテーピングを学び始めた。
さらに神経学を学ぶうちに、強い矯正がかえって不調を長引かせるケースもあると気づいた。
そこで、私は順番を入れ替えた。
- まずテープで変化を出す
- それでも動きが悪い所があれば、必要最小限だけ調整する
今では、矯正をほとんど必要としないケースのほうが多い。
この考え方をまとめたのが、10月26日に発売された私の著書『キネシオテーピングとカイロプラクティック あの日へ戻らない身体を作る』(キネシオテーピング協会会員限定)である。
会場で何を確かめてもらったのか?
首の骨(頸椎:けいつい)の間からは、腕へ向かう神経が出ている。
神経は、出口ごとに担当する腕の筋肉が決まっている。
そこで、肩を上げる力、肘を曲げる力などを一つずつ確かめ、どの高さの神経に負担がかかっていそうかを推測する。
会長講演でも語られた通り、この筋肉テストは筋力を測るためのものではない。
どこに問題があり、どこに貼るかを探すための検査である。
デモンストレーションでは何が起きたのか?
協力してくれたモデルの方は、首が右に傾いていた。
右肩を上げる力が弱く、首の横にも左右差のある硬さがあった。
そこで、首の横に沿ってテープを1本、引っ張らずに貼った。
貼った後の変化は次の通り。
- 首の上部の傾きが、見て分かるほど変わった
- 弱かった肩に力が入るようになった
- 背中の下部の曲がりだけは残った
矯正をする前に、歪みの一部はテープで変わる。
一方で、変わらずに残った部分は、別の要因を探す手がかりになる。
その両方を、会場で一緒に見てもらえたのはよかったと思う。
大会を通して見えてきたことは何か?
- テープの効果は一律ではない。貼った後に確かめることが欠かせない
- 筋肉テストは「筋力の測定」ではなく「貼る場所を探す検査」である
- 目に見える姿勢や使い方だけでなく、体の内側の状態にも目を向ける
体の反応には個人差がある。
同じテープ、同じ貼り方でも、変わる人と変わらない人がいる。
だからこそ、検査で確かめ、変化を見ながら次の一手を選ぶ。
その積み重ねが「あの日へ戻らない身体」につながっていくのかもしれない。
しびれや痛みが長引く場合、背景に内科的な病気が隠れていることもある。
気になる症状があれば、まず医療機関での確認が大切である。
首や肩、腕のしびれが繰り返し戻ってくる。そんなときは、テーピングと神経の見立てを組み合わせたアプローチを相談するという選択肢もある。
