THE INSPIRE第4回に参加して
先日、総合保証型セミナー「THE INSPIRE」第4回に参加してきた。
第1回から第3回までは、「症状ではなく状態を見る」という考え方を中心に学んできた。
筋膜、流体、腹圧、横隔膜、手術痕や古傷の影響——身体を局所ではなく全体として捉える視点である。
今回の第4回では、さらに具体的に、キネシオテープそのものが身体にどのような刺激を入れているのかを学ぶ内容だった。
キネシオテープというと、「関節を支えるもの」「痛い場所に貼るもの」というイメージが強いかもしれない。
しかし本来のキネシオテーピングは、固定を目的としたテープではない。
大切なのは、皮膚にやさしい刺激を入れることで、身体が動きやすい状態を作るという視点である。
キネシオテープは、固定するためのものではない
スポーツテーピングというと、足首を固定する、膝を支える、関節が動きすぎないように止める、というイメージがある。
もちろん、そうした目的で使うテーピングも存在する。
しかしキネシオテープは、それとは少し役割が違う。
キネシオテープには伸縮性がある。身体の動きを完全に止めるのではなく、動きに合わせて伸び縮みする。
つまり、固めるためではなく、動きを助けるためのテープである。
では、何を助けているのか。
それは筋肉そのものだけではない。皮膚、筋膜、皮下組織、間質液、リンパ、そして神経の感覚入力まで含めた、身体の表層環境である。
身体は、筋肉だけで動いているわけではない。
皮膚が動き、筋膜が滑り、組織の間にある水分が行き来し、神経がその情報を受け取ることで、動きやすさや力の入り方が変わる。
キネシオテープは、その表層の環境にやさしく働きかける道具である。
強く貼れば効くわけではない
テープを貼るとき、多くの人は「しっかり貼った方が効く」と考えやすい。
強く引っ張る。強く押さえる。剥がれないように何度もこする。
一見すると、その方が効果が出そうに感じる。
しかし、身体にとって強い刺激が常に良いとは限らない。
皮膚や浅い筋膜は、とても繊細な組織である。強い摩擦や圧迫、過度なテンションが加わると、かえって微細な損傷や滑走不全につながる場合がある。
特に、神経痛やしびれがある人は、身体が過敏になっていることが多い。
そのような状態で強く押す、強く伸ばす、強く貼ると、身体は安心するどころか、さらに警戒してしまうことがある。
痛みやしびれがある身体に必要なのは、必ずしも強い刺激ではない。
むしろ、弱く、長く、身体が受け入れやすい刺激の方が、反応しやすいことがある。
皮膚への刺激が、身体の反応を変える
皮膚には、触れられたこと、圧を受けたこと、伸ばされたことなどを感じる受容器がある。
普段、皮膚を単なる「表面」と考えがちである。
しかし皮膚は、身体の状態を脳に伝える重要なセンサーである。
たとえば電車で立っているとき、つり革を強く握らなくても、指先を少し触れているだけで身体が安定しやすくなることがある。
ほんの少しの接触情報によって、脳が身体の位置を認識しやすくなるからである。
キネシオテープにも、これに近い働きがある。
テープが皮膚に貼られていることで、皮膚から脳へ情報が入り続ける。その情報が、筋肉の働き方、姿勢の取り方、関節の動き方に影響する。
つまりキネシオテープは、単に筋肉を支えているのではなく、皮膚を通して身体に「ここを使っている」「ここが動いている」という情報を伝えているのである。
「ふわっと貼る」ことには意味がある
今回の講義で特に印象的だったのは、テープを「ふわっと貼る」という考え方である。
これは、ただ弱く貼るという意味ではない。
テープと皮膚の間には粘着剤がある。その粘着剤を皮膚に押し込むのではなく、皮膚の上にそっと乗せるように接着させる。
強く押し込むと、皮膚の下にあるゆとりや流体の動きをつぶしてしまうことがある。
一方、やさしく乗せるように貼ることで、皮膚とその下の組織にわずかな余裕が生まれやすくなる。
このわずかな余裕が、筋膜の滑走や間質液の流れ、感覚入力の変化につながる。
キネシオテープで大切なのは、テープの力で身体を無理に変えることではない。
身体が自分で整いやすくなるきっかけを、皮膚にやさしく入れることである。
痛い場所だけに貼ればよいわけではない
肩が痛いから肩に貼る。膝が痛いから膝に貼る。
これは一見わかりやすい。
しかし実際の身体は、それほど単純ではない。
- 肩の痛みに股関節の硬さが関係していることがある
- 膝の痛みに腹圧や横隔膜の影響が関係していることがある
- 腰の痛みに皮膚や筋膜の滑走不全が関係していることがある
痛い場所は、結果として負担が出ている場所である。
そのため、痛い場所だけにテープを貼っても、身体全体の状態が変わらなければ、また同じ場所に負担が戻ることがある。
大切なのは、どこに痛みがあるかだけでなく、なぜそこに負担が集まっているのかを見ることである。
まとめ ― 学びを施術へ
キネシオテープは、身体を固定するためだけのものではない。
皮膚にやさしい刺激を入れ、筋膜の滑走、流体の動き、神経の感覚入力を整えることで、身体が動きやすい状態を作るための道具である。
強く貼ることが正解ではない。強く押すことも、強く伸ばすことも正解ではない。
大切なのは、その人の身体が今どのような状態にあり、どのくらいの刺激なら受け取れるのかを見立てることである。
もちろん、すべての症状がテープだけで解決するわけではない。強い痛み、急な麻痺、感覚異常、歩行困難などがある場合は、医療機関での確認が必要である。
そのうえで、慢性的な痛みやしびれ、繰り返す不調に対しては、皮膚へのやさしい刺激が身体を見直すきっかけになることがある。
今回学んだ「皮膚へのやさしい刺激」という視点を、これからの施術にも活かしていきたい。
こうして学び続けることが、目の前の一人ひとりの身体と向き合う力になると考えている。
