深呼吸をしようとして、大きく息を吸う。
ところが、
「思ったほど空気が入ってこない」
「胸の途中で止まる感じがする」
「吸おうとすると、かえって苦しい」
そんな感覚になることがある。
呼吸が浅いと感じると、どうしても「もっと吸わなければ」と考えやすい。
しかし、呼吸は「吸う」だけでは成り立たない。
吸うことばかり頑張るのではなく、その前の「吐く」に目を向けることで、呼吸の感覚が変わることがある。
「深呼吸して」と言われても、うまく吸えないのはなぜか
「息がしづらい」と感じたとき、多くの場合、意識は「吸うこと」に向かう。
胸を大きく広げる。
肩を持ち上げる。
何とか空気をたくさん入れようとする。
それでも思うように入ってこないと、
「もっと深く吸わなければ」
と、さらに吸うことを頑張ってしまう。
ところが、呼吸は吸気だけでは成立しない。
吸う前には、吐くという過程がある。
そのため、「どれくらい吸えているか」だけでなく、「その前にどのように吐いているか」まで含めて呼吸を見る必要がある。
なお、息苦しさは呼吸の仕方だけで起こるものではない。
安静にしていても息苦しい、以前より動いたときに息切れする、胸痛や動悸を伴う、急に症状が現れたといった場合には、心臓や肺などの状態を医療機関で確認することが大切である。
「吸う」だけでなく「吐く」に問題があることも
肺の中の空気は、吸ったあとに吐き出される。
そして、次の空気が入ってくる。
この繰り返しが呼吸である。
ところが呼吸が浅く速くなっていると、
吸う
↓
十分に吐く前にまた吸う
↓
さらに吸おうとする
という呼吸になっていることがある。
このような状態では、本人は「吸えていない」と感じていても、実際には吸う量を増やすことだけでは解決しにくいことがある。
だから、
「息が吸えない」
と感じたとき、
「もっと吸う」
だけが選択肢ではない。
一度、吐く側に目を向けてみる。
それが呼吸を見直すひとつの手がかりになる。
呼吸は「吸う」と「吐く」のセットで考える
呼吸のリズムは、脳幹にある呼吸中枢を中心に自動的に調節されている。
眠っている間も呼吸が続いているのは、この仕組みがあるためである。
一方で、呼吸は意識的にも変えることができる。
速くする。
ゆっくりする。
深くする。
そして、吐く時間を少し長くすることもできる。
ここが呼吸の興味深いところである。
呼吸と自律神経、心拍の調節は互いに無関係ではない。
たとえば、呼吸に伴って心拍数はわずかに変動し、一般に吸っているときには速くなり、吐いているときには遅くなる。
そのため、ゆっくりとした呼吸や、吐く時間を意識した呼吸について、自律神経との関係が研究されている。
ただし、
「吸う=交感神経」
「吐く=副交感神経」
と単純に二つへ分けられるものではない。
大切なのは、「たくさん吸えば深呼吸になる」と考えないことである。
吐くことから始めると、呼吸は変わることがある
深呼吸というと、
「まず大きく吸う」
というイメージを持ちやすい。
そこで、順序を反対にしてみる。
最初から大きく吸おうとしない。
まず、今ある息をゆっくり吐いてみる。
苦しくなるまで無理に吐き切る必要はない。
力いっぱいお腹をへこませる必要もない。
楽にできる範囲で、急がず、ゆっくり吐く。
そして、次に入ってくる息を無理に大きくしようとしない。
自然に入ってくる息に任せる。
また、ゆっくり吐く。
「吸う量を増やす」のではなく、
吐く
↓
自然に吸う
↓
また吐く
という順序で呼吸を感じてみる。
それだけでも、「息が入ってこない」という感覚が変化することがある。
一方で、長く吐こうとして苦しくなったり、めまい、しびれ、動悸などが出たりする場合には中止する。
呼吸法は、苦しさを我慢して行うものではない。
姿勢や体の状態も呼吸に関係する
呼吸は肺だけで行われているわけではない。
横隔膜が動き、肋骨が動き、胸郭全体の容積が変化することで空気が出入りする。
そのため、
長時間同じ姿勢が続く。
背中が丸まった状態が続く。
肩や首まで使って一生懸命呼吸している。
体をほとんど動かしていない。
こうした状態では、呼吸の仕方にも影響が出ることがある。
だから、「深呼吸ができない」という感覚を考えるときには、
肺にどれだけ空気を入れるかだけでなく、呼吸するときに体がどう動いているか
を見ることも大切になる。
まとめ
深呼吸がうまくできないと、
「もっと吸わなければ」
と考えやすい。
しかし、呼吸は吸うことと吐くことの繰り返しで成り立っている。
そのため、吸うことばかりを頑張るより、
「その前に、ゆっくり吐けているだろうか」
と考えてみることで、呼吸の感覚が変わることがある。
ただし、「息が吸えない=吐けていない」と決めつけることはできない。
息苦しさには心臓や肺をはじめ、さまざまな原因が関係する。
安静時にも息苦しい、動くと息切れする、胸痛や強い動悸を伴う、症状が急に現れた場合などは、まず医療機関で確認することが大切である。
そのうえで大きな異常が見つからない場合には、呼吸そのものだけでなく、姿勢や体の動き、普段どのように呼吸しているのかまで見直すことが、ひとつの手がかりになる。
治らない理由や神経の考え方については、「はじめて当院の考え方に触れる方へ」でテーマ別に整理している。
呼吸のしづらさと体の状態との関係が気になったとき、一人で抱え込まず、相談するという選択肢もある。
