こめかみのあたりが痛む。
前髪の生え際が、触れるとつらい。
頭が痛いのだろうと受け取られやすい場所である。
けれども、痛みの出方をよく見ていくと、頭痛とは違う特徴が現れていることがある。
その痛みは、頭痛とは少し違うかもしれない
こうした訴え方をされることがある。
風で髪が揺れると、つらい。
シャンプーのときに痛む。
顔を洗うのがこわい。
枕に顔の側面が当たると痛むので、向きを変えて寝ている。
これらに共通しているのは、触れる刺激で痛みが出るという点である。
頭痛には、締めつけられる、脈打つ、重い、といった痛み方がある。一方で、片頭痛でも髪や頭皮への軽い接触が痛みとして感じられることがある。
そのため、触れると痛いという特徴だけで、頭痛ではないと判断することはできない。
ただし、三叉神経痛では、顔の片側に電気が走るような強い痛みが、軽い刺激をきっかけに現れることがある。
痛みは一瞬から数十秒程度、長くても2分ほどで引いていくことが典型的である。
こうした短時間の強い痛みが繰り返される場合には、三叉神経が関係している可能性も考えられる。
髪が揺れるだけで痛むのは、なぜか
顔の感覚は、三叉神経(さんさしんけい)という神経が担っている。
名前のとおり、三つに枝分かれして、額から目のまわり、頬、顎へと広がっている。こめかみや前髪の生え際にも、その枝が分布する範囲がある。
この神経は、歯の感覚も担っている。
歯が痛み出したときの、何も手につかなくなるようなあの感覚。あれも三叉神経が伝えている痛みである。
同じ神経が顔の表面にも広がっていると考えると、顔に現れる神経痛の強さが想像しやすくなる。
そして、三叉神経痛には、ひとつの特徴がある。
ごく軽い刺激が、強い痛みの引き金になることがある。
顔に触れた。顔を洗った。会話で口を動かした。食事をした。冷たい風が顔に当たった。
本来なら痛みを引き起こさないような刺激で、突然、電気が走るような痛みが現れる。
痛みのきっかけになる場所が、ごく小さな範囲に限られていることもある。
こうした刺激に敏感な場所は、トリガーゾーン(発痛帯)と呼ばれる。
ただし、前髪の生え際や頭皮の痛みが、すべて三叉神経痛によるものとは限らない。
なぜ「頭痛」として片づけられやすいのか
理由は、場所が重なっているからである。
こめかみ、前髪の生え際、額。ここは頭痛が出る場所としても知られている。
そのため「頭が痛い」と表現され、頭痛として受け取られることがある。
市販の頭痛薬を試しても、思うように変化しない場合もある。
ただし、薬が効かないという理由だけで、頭痛と神経痛を区別することはできない。
もうひとつ、別の形で見過ごされることもある。
痛む場所が顎や歯のあたりに近いと、歯の問題として考えられることがある。
歯科で原因が見つからないのに痛みが続く、という経緯をたどる場合もある。
そして、こうした痛みは本人から語られにくい。
肩が痛い、腰がつらい、という主訴で相談に来られた方が、話の流れでふと口にすることがある。
「そういえば、髪を触ると痛いんです」と。
本人にとっては別の話題であり、わざわざ伝えるものだと思われていないことがある。
放っておくと、どうなるのか
三叉神経痛では、痛みが落ち着く時期がある一方で、発作を繰り返したり、頻度が増えたりすることもある。
経過には個人差があり、必ず悪化するというわけではない。
ただ、痛みが強くなると、顔を洗う、髭を剃る、歯を磨く、人と話す、といった日常の動作を避けるようになることがある。
生活の幅が狭くなってしまう場合もある。
だからこそ、早い段階で確かめておくことに意味がある。
顔面の強い痛みは、医療機関で原因を確認しておきたい症状である。脳神経外科や脳神経内科が相談先になる。
必要に応じて画像検査などが行われ、神経と血管の位置関係や、ほかの原因がないかを確認することもある。
特に次のような場合は、早めに受診してほしい。
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顔の片側に、今までにない強い痛みが出た
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顔に発疹や水ぶくれが出ている(帯状疱疹の可能性がある)
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目の症状、ものが二重に見える、顔が動かしにくいなどを伴う
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突然の激しい頭痛、しゃべりにくさ、手足の力が入らないなどがある
最後のような症状は、すぐに救急の判断が必要になる場合がある。
また、50歳以降に新しくこめかみの痛みが現れ、噛むと顎が痛む、見え方が変わるなどの症状を伴う場合も、速やかな医療機関での確認が必要である。
まとめ
こめかみや前髪あたりの痛みは、場所だけを見れば頭痛と区別がつきにくい。
けれども、軽く触れただけで突然強い痛みが走る、片側に出る、短時間で引いていく——こうした特徴が重なるとき、三叉神経痛が関係している可能性がある。
一方で、髪に触れると痛いという症状だけでは、原因を決めることはできない。
大切なのは、痛みが出る場所だけでなく、どんな刺激で、どのような痛みが、どのくらい続くのかを確認することである。
まずは医療機関で原因を確認しておくことが大切である。
そのうえで、痛みの出方を整理しておくことは、状態を見直していくうえでひとつの手がかりになる。
頭痛として整理されやすい痛みについては、頭痛についてでも扱っている。
痛みの出方を整理しておきたいとき、一人で抱え込まず、相談するという選択肢もある。
