病院でレントゲンやMRIを撮ると、こう言われることがある。
「石灰化があります」
「椎間板ヘルニアがあります」
「軟骨がすり減っています」
すると多くの方は、
「だから痛いのか」
「もう治らないのではないか」
と感じる。
画像検査は重要である。
骨折・腫瘍・強い炎症などの確認には欠かせない。
ただし、画像に写っているものが、必ずしも今の痛みの原因とは限らない。
ここを知っているかどうかで、選択肢は大きく変わる。
画像に写るものと、痛みの原因は同じとは限らない
肩の痛みで石灰化があると言われた方でも、身体の状態を整えることで、その場で腕が上がりやすくなったり、痛みが軽くなったりすることがある。
このとき、石灰化が消えたわけではない。
それでも動きや痛みが変わるのであれば、少なくとも石灰化だけで痛みのすべてを説明するのは難しい。
石灰化は「そこに写っているもの」であって、 「今の痛みを出している真犯人」とは限らないのである。
ヘルニアがあっても痛くない人がいるのはなぜか
ヘルニアと聞くと、「神経が圧迫されているから痛い」と考えがちである。
もちろん、実際に神経症状を引き起こすヘルニアもある。強い麻痺・排尿排便障害・急激な悪化がある場合は、医療機関での判断が必要である。
しかし実際には、
- 画像上ヘルニアがあっても、痛みやしびれがない人がいる
- 画像では大きな異常がないのに、強い痛みを訴える人がいる
もし「ヘルニア=痛み」であれば、ヘルニアがある人は全員痛くなければおかしい。
しかし現実は、そう単純ではない。
痛みには
- 筋肉の働き
- 神経の過敏さ
- 血流 ・姿勢
- 身体の使い方
- 感覚のズレ
これらが複雑に関係している。
痛みは「壊れているサイン」だけではない
急性の痛みでは、痛い場所がはっきりしていることが多い。
転倒・骨折・捻挫・炎症。これらは「壊れているサイン」である。
しかし長く続く痛みやしびれは、「そこが壊れているから痛い」とは限らない。
長期間痛みが続くと、神経が過敏になる。
本来なら痛みとして感じない刺激まで、痛みとして処理してしまうことがある。
たとえるなら——
火事ではないのに、火災報知器が鳴り続けている状態である。
必要なのは報知器を無視することではない。
なぜ過敏になっているのかを見極め、身体が安心して動ける状態に戻していくことである。
なぜ神経は過敏になるのか
神経が過敏になる背景には、いくつもの要素がある。
- 姿勢の崩れ
- 筋肉の使い方の偏り
- 呼吸の浅さ
- 血流の低下
- 睡眠不足
- 慢性的な緊張
- 過去の痛みの記憶
また、左右の感覚の違いも重要である。
右と左で触った感じが違う。
足裏の接地感が違う。
片側だけ力が入りにくい。
こうした小さなズレが積み重なると、神経系は身体を安全にコントロールしにくくなる。
その結果、脳や神経がその部位を「危険」と判断し、痛みやしびれとして知らせることがある。
つまり痛みは、
「画像に異常があるから出る」のではなく、
「神経系が危険と判断しているから出る」
場合もあるのである。
画像だけであきらめる必要はない
「石灰化があるから仕方ない」
「ヘルニアだから治らない」
「年齢だからどうしようもない」
こう考えてしまうと、本来変わる可能性のある痛みまで、変わらないものとして受け入れてしまうことになる。
画像検査で危険な病気や大きな損傷がないかを確認することは大切である。
しかしそのうえで痛みが続いているなら、画像に写ったものだけで判断するのではなく、身体の機能を見直す必要がある。
- どの動きで痛むのか
- どの姿勢で楽になるのか
- どの筋肉が働いていないのか
- どの感覚が過敏になっているのか
- どこに左右差があるのか
こうした視点で見ていくと、画像だけでは見えなかった痛みの背景が見えてくる。
画像に写る石灰化やヘルニアは、重要な情報である。
しかし、それが必ずしも痛みの真犯人とは限らない。
石灰化があっても痛くない人がいる。
ヘルニアがあっても症状がない人がいる。
画像に大きな異常がなくても、強い痛みを感じる人がいる。
痛みは、画像だけで決まるものではない。
神経の過敏さ、筋肉の働き、感覚のズレ、身体の警戒反応などが複雑に関係している。
だからこそ、「画像で異常があると言われたから仕方ない」とあきらめる必要はない。
大切なのは、画像に何が写っているかだけではなく、今の身体がどう反応しているかを丁寧に見ていくことである。
痛みの原因は、レントゲンやMRIの中だけにあるとは限らないのである。
