【症例紹介51】肩甲骨の痛みから左腕・手のしびれへ

—検査で異常なしと言われた50代女性のケース

◆相談内容

50代女性の症例
海外在住であり、一時帰国のタイミングを利用して当院へ来院された。

症状の始まりは、寝違えたような左肩甲骨周辺の痛みであった。
最初は局所的な違和感や痛みであったため、時間の経過とともに自然に改善するのではないかと考えていたそうである。しかし、その後に運動やストレッチ、テニスなどを行った際に症状が悪化し、肩甲骨周辺の痛みだけでなく、左腕全体のだるさや圧迫感が現れるようになった。

さらに時間の経過とともに症状は腕から手へと広がり、来院時には左手のひら側、とくに人差し指から中指周辺にかけてしびれを感じる状態となっていた。

ご本人は、

「腕がだるくて、手を上に挙げていないとつらい」

「血管をつかまれているような圧迫感がある」

「このまま一生続いたらどうしようと不安だった」

と話されていた。

海外の医療機関ではレントゲン検査や血液検査を受けたものの、大きな異常は認められなかったとのことである。そのため神経痛に対する薬の処方を提案されたが、根本的な原因については明確な説明を受けられなかったという。

また、現地のカイロプラクティックにて首や背中の矯正も受けていた。しかし施術直後には多少の変化を感じるものの、その効果は長続きせず、しばらくすると再び症状が戻ってしまった。そのため、「本当にこのままで大丈夫なのだろうか」という不安が強くなり、当院へ相談されたのである。

状況と背景(Before)

 

来院時に確認できた主な症状は以下の通りである。

  • 左肩甲骨周辺の痛み
  • 左腕のだるさ、重さ
  • 左手のひら側のしびれ
  • 人差し指、中指周辺のしびれ
  • 手を握る感覚の違和感
  • 左腕を下ろしているとつらく、手を上に挙げたくなる
  • 左肩、首、胸周辺の強い緊張
  • 左肩甲骨の位置異常

特に注目すべき点は、症状が肩甲骨周辺だけにとどまらず、腕から手へと広がっていたことである。

一般的な肩こりや筋肉疲労であれば、痛みや張りは局所にとどまることが多い。しかし今回のケースでは、肩甲骨周辺の痛みから始まり、腕のだるさ、さらに手のしびれへと症状が変化していた。

このような場合、単純に痛みのある場所だけを施術対象とするのでは不十分である。首から腕、そして手へと続く神経の経路全体を評価し、どこで負担が生じているのかを確認する必要がある。

◆検査

検査ではまず、頚椎そのものに問題があるのか、それとも神経や血流の通り道に問題があるのかを慎重に確認した。

首の動きを評価したところ、上を向く動作で腕のだるさやしびれが誘発されやすい反応が認められた。しかし、頚椎椎間板ヘルニアや重度の神経根障害を強く疑うような典型的な反応は明確ではなかった。

そのため、頚椎そのものよりも、首の前側にある筋肉や鎖骨周辺、肋骨周辺、肩甲骨周辺などで神経が圧迫されている可能性を考えた。

さらに筋力検査を行ったところ、左手の指を曲げる力、手首を曲げる力、前腕を内側へひねる力に低下がみられた。

これらの動きは、主に正中神経の支配を受ける筋肉と関連している。

正中神経は首から腕を通り、前腕を経由して手のひら側へ向かう重要な神経である。そのため、この神経の通り道のどこかで負担が生じると、人差し指や中指周辺のしびれ、握力低下、手の使いにくさなどが現れることがある。

以上の検査結果から、今回の症状は肩甲骨周辺だけの問題ではなく、首の前側から腕、手へ向かう神経経路全体に負担がかかっている可能性が高いと判断した。

◆見立ての整理(原因の構造)

今回の症状に関与していると考えられた要因は主に3つである。
 

1. 首の前側の筋肉の緊張

まず大きな要因として考えられたのが、首の前側にある斜角筋(しゃかくきん)の過緊張である。

斜角筋の周辺には腕神経叢と呼ばれる神経の束が通過している。腕神経叢は首から腕へ向かう神経の出発点ともいえる重要な部位である。

この筋肉が硬くなると神経や血管への圧迫が生じやすくなり、腕のだるさやしびれ、握力低下などの症状につながることがある。
 

2. 肩甲骨の位置の乱れ

次に確認されたのが肩甲骨の位置異常である。

左肩が前方へ入り込み、肩甲骨も本来の位置からずれていた。肩甲骨は腕の動きや首の安定性に大きく関与するため、その位置が乱れると周囲の筋肉に過剰な負担がかかる。

さらに胸郭周辺のスペースが狭くなり、神経や血管の通り道にも影響を及ぼす可能性がある。
 

3. 背中側の筋肉が過度に引き伸ばされていたこと

最初に痛みが出ていた肩甲骨内側周辺では、筋肉が縮んで硬くなっているというよりも、前方へ引っ張られて伸ばされ続けている状態が疑われた。

このような状態では、強いストレッチや過度な矯正によって一時的に楽になったように感じても、その後に身体の防御反応が働き、かえって症状が戻ったり悪化したりすることがある。

実際に、現地で受けた矯正後に症状が再発していた経過とも一致していた。

◆施術とアプローチ

初回施術では、強い矯正や無理な刺激は行わなかった。

症状の経過や検査結果から判断すると、過度な刺激はかえって神経を興奮させる可能性があると考えたためである。

そこで今回はキネシオテーピングを中心に施術を行った。

目的は筋肉や筋膜を無理に伸ばすことではなく、伸ばされすぎている組織を適切な状態へ戻し、縮みすぎている部分には動きやすさを与えることである。そして神経の通り道にかかる負担を軽減することを目指した。

主な施術部位は以下の通りである。

  • 首の前側
  • 胸周辺
  • 肩甲骨周辺
  • 背中の筋肉
  • 神経経路に関連する筋膜ライン

キネシオテーピングは貼付後も持続的に皮膚や筋膜へ穏やかな刺激を与えることができる。そのため施術直後だけでなく、日常生活の中でも身体が本来の機能を取り戻しやすい状態を維持することが期待できる。

◆結果と変化(After)

施術後に再度検査を行ったところ、来院時に低下していた左手の指を曲げる力や手首を曲げる力に改善がみられた。

特に施術前には抵抗に負けやすかった動きが、施術後には明らかに力が入りやすくなっていた。

これは神経の伝達や筋肉の働きに良い変化が生じ始めた可能性を示している。

さらに翌日、ご本人から以下のような連絡をいただいた。

「今日は朝から外に出ていましたが、だるくて手を上に挙げないといけないのは今までで一度くらいだったと思います」

「施術後の違いにビックリしています」

「まだもちろん痺れはあるけど、手を握る感覚も昨日とは違うのが分かります」

「テープは軽減・変化させていると感じています」

もちろん、この段階でしびれが完全に消失したわけではない。しかし、腕を上げなければつらい状態の頻度が減少し、握る感覚にも変化が現れていたことから、身体が良い方向へ反応し始めていると考えられた。

◆今後の方針と再発予防

本来であれば、週に1回程度の頻度で状態を確認しながら、1か月から1か月半ほどかけて神経の通り道や肩甲骨周辺の機能改善を進めていくことが理想である。

しかし今回は一時帰国中という事情があり、継続的な通院が難しいケースであった。

そのため、必要に応じて滞在先近隣でキネシオテーピングに対応できる施術院を探し、継続的なケアを受けられるよう案内する方針とした。

また、帰国前に再来院できる場合には、ご自身でも実践できるセルフテーピングの方法を指導する予定である。

肩甲骨周辺の痛みから始まり、腕のだるさや手のしびれへと症状が広がっていく場合、単なる肩こりや寝違えだけではない可能性がある。

また、レントゲン検査や血液検査で異常が見つからなくても、神経の通り道に負担がかかっていることで症状が出現しているケースは少なくない。

大切なのは痛みのある場所だけを見るのではなく、

・首
・肩甲骨
・胸周辺
・腕へ向かう神経の通り道
・筋肉と筋膜のバランス

を総合的に評価することである。

実際に、強いストレッチや首を鳴らすような刺激によって症状が悪化するケースも存在する。

「検査では異常がないと言われたが、しびれが続いていて不安である」

「肩甲骨の痛みから腕や手へ症状が広がってきた」

「薬だけでは不安なので原因をしっかり確認してほしい」

このようなお悩みをお持ちの方は、一度専門的な評価を受けることをおすすめする。

監修・執筆者情報:アールカイロプラクティックセンター 院長 菊池 竜

キネシオテーピング協会認定インストラクター
25年以上・延べ2万5千人以上の臨床経験

※本症例は一例であり、
すべての方に同様の経過が当てはまるわけではありません。
症状や生活背景によって回復過程は異なります。

お気軽にお問合せください

フォームでのご相談、LINE、WEBからのご予約は24時間受け付けております。お気軽にご連絡ください。

友だち追加

新着情報

2026/2/9
アールカイロは、2026年2月9日に開業20周年を迎えました。
2026/6/30
当院の7月の定休日は、3日(金)・5日(日)・10日(金)・12日(日)・17日(金)・19日(日)・24日(金)・26日(日)・31日(金)です。 
尚、20日(月)は祝日のため、4日(土)はキネシオテーピング協会関東支部合宿研修会に参加するため、お休みします。
2026/7/21

アクセス・受付時間

住所・アクセス

〒154-0004
東京都世田谷区太子堂2-8-17
88.SANGENJAYA202号室

東急田園都市線 三軒茶屋駅北口Bより徒歩6分

営業時間
 
午前 × ×
午後 × ×

平日9:30~19:00/土曜9:00~18:00

定休日

金曜・日曜・祝日・12/30~1/3

※LINE、フォームからのお問合せ、ご予約は24時間受付しております。

院長ごあいさつ

菊池 竜

「私が最初から最後まで責任をもって対応します。」