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アールカイロプラクティックセンター

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【症例紹介38】「立ち上がりや歩き始めに股関節が痛む」

—関節ではなく“左右で異なる筋バランス”が原因だったケース(50代女性・会社員)

「座っていて立ち上がる瞬間に股関節が痛む」
「歩き始めが一番つらく、しばらくすると少し楽になる」

こうした股関節の痛みは、
変形性股関節症や関節の問題を疑われやすい。
しかし実際の臨床では、関節そのものに異常がなくても、筋バランスの崩れによって痛みが出るケースが少なくない。

今回紹介するのは、
4か月前から左右の股関節痛に悩まされていた50代女性の症例である。
検査の結果、痛みの正体は「関節」ではなく、
左右で異なる筋の短縮・伸張によって崩れた姿勢と動作にあった。

◆状況と背景(Before)

  • 50代女性・会社員

  • 既往歴
     ・30年以上前に両膝の半月板損傷と診断(現在は強い痛みなし)
     ・2年前に大腸がんの手術を受けている

  • 主な症状
     4か月ほど前から左右の股関節に痛みが出現。
     とくに
     ・座位から立ち上がる瞬間
     ・歩き始め
     で痛みが強い。

 長時間立位や歩行でも徐々に痛みが増すが、
 座る・休憩すると痛みは落ち着く。

  • 検査に対する不安
     過去の膝の経験から、
     「膝を捻る」「深く曲げる」検査に恐怖心があり、
     股関節の可動域検査や整形外科学検査はほとんど行えなかった。

◆検査と見立て

触診では、

  • 左のお尻に明確な張り

  • 股関節そのものには左右差や強い圧痛はほとんどなし

という所見が得られた。

関節検査が制限される中で、
問診と立位姿勢分析を中心に評価を進めた。

■ 立位姿勢分析の所見

  • 前後から見ると
     → 骨盤の右傾斜左回旋

  • 横から見ると
     → 骨盤の前方移動後傾

これらの姿勢を前提に、
股関節周囲の筋肉を一つずつ筋肉テストで評価した。

◇筋機能評価の結果(左右差)

■ 右側

  • 大殿筋

  • 中殿筋

  • 大腿筋膜張筋

  • 大腿直筋

に機能低下がみられた。

しかし、
手技細胞組織移動テストにより評価を進めると、
右側では「大腿直筋」だけを調整することで、
他の3つの筋肉も正常に機能できることが判明した。

■ 左側

  • 腸骨筋

  • 大腿直筋

  • 中殿筋

  • 大腿筋膜張筋

に機能低下がみられた。

同様に評価した結果、
左側では「大腿筋膜張筋」を調整することで、
他の3つの筋肉も正常に機能することが分かった。

◇見立ての整理(原因の構造)

以上の結果から、
この股関節痛は次のアンバランスによって起きていると判断した。

  • 右側:大腿直筋の短縮

  • 左側:大腿筋膜張筋の過度な伸張

この左右差によって、

  • 骨盤が傾き、前後・左右にずれる

  • 立ち上がりや歩き始めで股関節に不均等な負荷が集中

  • 動作開始時の痛みとして表面化

していたと考えられる。

◆施術とアプローチ

施術では、
「すべての筋を同時に治療する」のではなく、
原因となっている筋に絞って調整する方針を取った。

  1. 右大腿直筋・左大腿筋膜張筋へのキネシオテーピング療法+筋スラッキング療法
     → 再検査で、
      右の大殿筋・中殿筋・大腿筋膜張筋、
      左の腸骨筋・大腿直筋・中殿筋がすべて正常化。

  2. 連動筋への追加アプローチ
     右前脛骨筋、左長拇趾伸筋に
     キネシオテーピング療法+筋スラッキング療法を実施。

再検査では、

  • 骨盤の右傾斜・後傾・左回旋・前方移動が消失

  • 姿勢が左右対称に近づく

という変化が確認された。

◆結果と変化(After)

施術後、

  • 座位から立ち上がる時の股関節痛がほぼ消失

  • 歩き始めの痛みが気にならないレベルまで軽減

という即時的な変化が見られた。

長時間立位・歩行時の症状については、
帰宅後・後日の経過観察とした。

◆今後の方針と再発予防

今回の施術で筋由来の問題は大きく改善したが、
もし長時間立位や歩行で痛みが残る場合には、

  • 股関節の関節可動域検査

  • 整形外科学検査

を改めて行い、
筋肉以外の要因(関節・軟部組織)を評価する必要があることを説明した。

また、再発防止のため、

  • 長時間同じ姿勢を避ける

  • 30分に一度、立ち上がって姿勢をリセット

  • 左右どちらかに体重をかけ続けない

といった生活動作の見直しを提案した。

◆考察

股関節痛は、
必ずしも関節の変形や損傷が原因とは限らない。

本症例のように、

  • 筋の短縮と伸張の左右差

  • 姿勢の歪み

  • 動作開始時の負荷集中

が重なることで、
関節が正常でも痛みが生じるケースは少なくない。

整形外科的検査が制限される状況でも、
姿勢分析と筋機能評価を組み合わせることで、
原因を特定し改善につなげることは可能である。

立ち上がりや歩き始めの股関節痛は、
「年齢」や「関節の問題」と片付けられがちである。

しかし、
筋のアンバランスを整えるだけで、
痛みは驚くほど変化することがある。

症状が出る動作と姿勢を丁寧に見直すことが、
改善への最短ルートである。

監修・執筆者情報:アールカイロプラクティックセンター 院長 菊池 竜

キネシオテーピング協会認定インストラクター
25年以上・延べ2万5千人以上の臨床経験

※本症例は一例であり、
すべての方に同様の経過が当てはまるわけではありません。
症状や生活背景により回復過程は異なります。

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