【症例紹介51】5年間続いた両足裏のしびれが改善し、日常生活での違和感がほとんど気にならなくなった

—「このまま走れなくなるのではないか」と不安を抱えて来院された50代男性のケース

◆相談内容

50代男性の症例
主訴は、両足裏のしびれと、足裏に何かを踏んでいるような違和感であった。

症状は約5年前から続いており、当初はフルマラソンの後半になると
「靴の中に砂利が入っているような感覚」
として自覚していたという。

当初は走り終わると気にならなくなることもあったが、徐々に日常生活の中でも違和感を感じるようになり、来院時には立っている時、座っている時、歩いている時にも足裏のしびれを意識する状態になっていた。

特にご本人が強く不安を感じていたのは、
「このまま走れなくなるのではないか」
という点であった。

整形外科も受診していたが、明確な検査や説明はなく、経過観察となっていたため、原因をはっきりさせたいという思いで来院された。

状況と背景(Before)

 

来院時に確認できた主な状態は以下の通りである。

  • 両足裏のしびれ
  • 土踏まずより前から足趾にかけての違和感
  • 長く立っていると症状が強くなりやすい
  • 座っていても軽く気になることがある
  • 登山や長距離歩行の後半で違和感が増しやすい
  • 左ふくらはぎがつりやすい
  • 日常生活では何とか過ごせるが、運動機能の低下が不安
  • 自己流ストレッチは続けていたが、明確な改善実感はない

興味深かったのは、歩いている時や軽く動いている時の方が、じっと立っている時より気になりにくい場面があるという点である。
これは単純な末梢神経障害というより、立位姿勢で特定の筋群に負担が集中し、神経の通り道や血流が悪化している可能性を示していた。

また、症状が最初から日常的に強かったのではなく、運動時だけの違和感から始まり、数年かけて日常症状へ移行していたことも重要な背景であった。
これは、局所の損傷というより、姿勢や筋緊張の問題が長年蓄積した結果と見る方が自然である。

◆検査

検査では、足裏の感覚、下肢後面の筋緊張、筋力反応、神経伝達、立位姿勢を中心に確認した。

まず感覚検査では、足底から足趾にかけて左右差が一部みられ、感覚の質にわずかな偏りがあった。
また、足先の冷えも実際には明確であり、ご本人の自覚以上に末梢の血流低下が存在していた。

可動性検査では、左下肢の方がやや挙上しにくく、左右差がみられた。
筋機能の確認では、左殿部、左ハムストリングス内側、右殿部深層、右ふくらはぎ外側などに機能低下や緊張の偏りがみられた。

さらに、腰椎由来かどうかをみるために腰部の影響も確認したが、今回の検査では腰を反らす、曲げるといった操作で筋力反応に明確な変化は出なかった
そのため、腰椎そのものが主原因である可能性は低いと判断した。

立位姿勢を確認すると、身体は前後・左右に崩れており、特に立っているだけで殿部、ももの裏、ふくらはぎに負担がかかりやすい状態であった。
つまり、症状の背景には「しびれが出ている場所」だけではなく、「しびれが出る姿勢で立ち続けている身体の使い方」があったのである。

◆見立ての整理(原因の構造)

今回の症状は、単に足裏が悪いわけでも、腰椎ヘルニアのような典型的な腰由来でもなかった。
見立てとしては、左右で原因が異なる複合型の足裏しびれである。
 

1.左側の問題

左側では、ももの裏、特にハムストリングスの緊張とバランス不良が強く、坐骨神経ラインへの負担が大きかった。
加えて、内くるぶし後方から足裏へ向かう通り道、いわゆる足根管周囲でも圧迫と循環低下が起きていた可能性が高い。
 

2.右側の問題

右側では、殿部深層、特に梨状筋周囲の緊張が強く、坐骨神経の通り道が障害されていた。
さらに右側も左側同様、足首内側から足裏にかけての血流低下が加わっていた。
 

3.共通していた問題

左右ともに共通していたのは、立位姿勢の崩れによって下肢後面が常に緊張しやすい状態になっていたことである。
動いている時は筋肉が使われて一時的に緩みやすいが、じっと立つと支えるために特定の筋群が固まりやすい。
その結果、神経や血流が障害され、足裏のしびれとして表れていたと考えられる。

つまりこのケースは、
下肢後面の筋緊張、姿勢保持の崩れ、足部の循環低下が重なり、長年かけて運動時の違和感が日常のしびれへ移行したケース
と整理できる。

◆施術とアプローチ

施術では、足裏だけを局所的に追いかけるのではなく、次の4点を重視した。

  1. 神経の通り道を邪魔している筋肉の緊張を減らすこと
  2. 足首内側から足裏にかけての循環を改善すること
  3. 立位で負担が集中する姿勢パターンを修正すること
  4. 戻りにくい状態を維持できるようにすること

具体的には、キネシオテーピングによる筋膜・筋肉調整を中心に、お尻、ももの裏、ふくらはぎ、足首周囲へのアプローチを行った。
必要に応じて骨格・姿勢調整も加え、単に一時的に緩めるのではなく、日常で崩れにくい条件づくりを狙った。

また、日常生活では以下の点を指導した。

  • 足を組まない
  • 尻ポケットに財布やスマホを入れたまま座らない
  • 自己流ストレッチは中止する
  • 足元を冷やさない
  • 平地の軽い歩行は無理のない範囲で続ける
  • 入浴はシャワーだけで済ませず湯船に浸かる

さらに、喫煙と飲酒は回復を妨げる条件になりやすいため、減らす方向で調整する必要性も説明した。

◆結果と変化(After)

施術を継続した結果、足裏のしびれと違和感は徐々に軽減した。
特に日常生活の中で気になっていたしびれは大きく改善し、最終的には「日常生活でのしびれや違和感もほとんどなくなった」という状態まで到達した。

患者様からは、以下のご感想をいただいている。

「おかげさまで、最近は足の調子がとても良く、日常生活での痺れや違和感もほとんどなくなりました。先生の丁寧な施術のおかげと、心より感謝申し上げます」

これは単に症状が一時的に軽くなったのではなく、日常生活の中での不安が大きく減り、身体の使い方そのものが変わってきたことを示している。

◆今後の方針と再発予防

今回の症例では、日常生活でのしびれや違和感は大きく改善した。
しかし、症状が落ち着いたからといって、身体の使い方や負担のかかり方が完全に消えたわけではない。

もともとこの方は、

  • 立っている時に下肢後面へ負担が集中しやすい姿勢であったこと
  • 左右で異なる筋緊張の偏りがあったこと
  • 足首周囲から足裏にかけて循環が落ちやすい状態であったこと
  • 長年の蓄積によって運動時の違和感が日常症状へ進んでいたこと

といった背景を持っていた。

そのため、症状が落ち着いたあとも、再び同じ負担が積み重なれば再発する可能性はある。
実際、足裏のしびれは「治ったか、治っていないか」の二択ではなく、身体の状態が崩れた時に再び出やすいサインとして現れることがある。

本人には、今後の方針として以下をお伝えした。

まず第一に、症状が落ち着いている間こそ、無理を重ねすぎないことである。
以前のように違和感を我慢しながら運動量を増やしたり、疲労が抜けきらないまま負荷を重ねたりすると、再びお尻、ももの裏、ふくらはぎ、足首周囲に緊張が集まりやすくなる。

第二に、日常生活の小さな癖を軽く見ないことである。
足を組む、尻ポケットに財布やスマホを入れたまま座る、足元を冷やす、長時間同じ姿勢を続けるといったことは、一つひとつは小さく見えても、長期的には神経や血流に影響しやすい。

第三に、自己流で無理に伸ばしたり、違和感を押し切って何とかしようとしないことである。
今回のケースでも、自己流ストレッチで大きく改善することはなかった。
問題は努力不足ではなく、狙う場所と順番がずれていたことである。
再発予防においても大切なのは、頑張ることではなく、身体にとって必要なことを正しい順番で積み重ねることである。

第四に、少しでも違和感が戻り始めた段階で早めに調整することである。
しびれや違和感が強くなってからではなく、「最近少し気になる」「立っていると足裏が重い」「歩いた後に残る感じがある」といった早い段階で対応できれば、再び悪化する前に整えやすい。

今回の方には、状態が落ち着いた今はいったん様子を見る形で問題ないこと、ただし再びしびれや違和感が出てきた場合は、我慢して長引かせるのではなく、早めに相談することをお伝えした。

足裏のしびれや違和感が続くと、多くの方はまず
「腰が悪いのではないか」
「年齢のせいではないか」
「足裏そのものの問題ではないか」
と考える。

もちろん、それらが関係する場合もある。
しかし実際には、それだけでは説明できないケースも少なくない。

今回の症例のように、

  • 足裏に何かを踏んでいる感じがある
  • 土踏まずより前にしびれや違和感がある
  • 長く立っていると悪化しやすい
  • 歩いていると少し紛れることがある
  • 登山や長距離歩行の後半で強くなる
  • 腰が原因と思っていたが、はっきりしない
  • このまま歩けなくなる、走れなくなることが不安

といった状態は、足裏だけを見ても答えが出ないことがある。

本当の問題は、足裏に症状が出ていることではなく、
なぜ足裏に負担が集まる身体の状態になっているか
である。

お尻の深い筋肉が坐骨神経を圧迫していることもある。
ももの裏の緊張が神経の通り道を邪魔していることもある。
足首周囲の圧迫や循環低下が、足裏のしびれとして出ていることもある。
さらに、立っているだけで下肢後面に負担が集中する姿勢の崩れが、症状を慢性化させている場合もある。

つまり、足裏のしびれは「足裏だけの問題」とは限らないのである。

また、最初は運動時だけの軽い違和感であっても、長年放置することで日常生活でも気になる症状へ進んでいくことがある。
そのため、

「まだ我慢できるから大丈夫」
「歩けているから問題ない」
「もう少し様子を見よう」

と引っ張りすぎることは勧められない。

大切なのは、症状の強さだけで判断するのではなく、
症状の出方がどう変化してきたか
をみることである。

以前は運動した時だけだったのに、今は立っているだけでも気になる。
前は休めば消えていたのに、今は日中ずっと残る。
こうした変化がある場合、身体の中では確実に負担の構造が深くなっている。

同じような症状で悩んでいる方は、足裏そのものだけでなく、
お尻、ももの裏、ふくらはぎ、足首、姿勢、日常動作まで含めて確認する必要がある。

監修・執筆者情報:アールカイロプラクティックセンター 院長 菊池 竜

キネシオテーピング協会認定インストラクター
25年以上・延べ2万5千人以上の臨床経験

※本症例は一例であり、
すべての方に同様の経過が当てはまるわけではありません。
症状や生活背景によって回復過程は異なります。

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