【結論】
しびれ・神経痛が変わらない理由は、治療不足ではない。
重要なのは次の整理である。
- 体の現場(末梢)の問題か
- 脳と脊髄(中枢)の過敏化か
- 傷あと(瘢痕)の刺激か
さらに、
- 小さな変化を拾えているか
- 自分の状態を観察できているか
- 受け身になりすぎていないか
この条件が揃わなければ、刺激は精度を持たない。
当院が最初に行うのは施術ではない。
判断の整理である。
通院回数の問題ではない
しびれ・神経痛が変わらない最大の理由は、治療不足ではない。
問題は「神経の状態が整理されていないこと」にある。
「もう何件も通った」
「薬も飲んだ」
「リハビリも続けた」
それでも変わらない。
しびれや神経痛で来院される方の多くが、こう語る。
だが本当の問題は、
治療回数でも、年齢でも、重症度でもない。
“脳と神経がどう書き換わっているか”
ここを見誤ると、通院しても変わらない。
痛みは“警報装置”である
ここを理解できるかどうかで、回復の方向は決まる。
痛みは、単なる症状ではない。
本来は「守るための警報装置」である。
しかし警報装置は、
長く鳴り続けると誤作動を起こす。
火事は消えているのに、
警報だけが鳴り続ける。
これが慢性痛の正体である。
問題は火事ではなく、
警報システムそのものにある。
それにもかかわらず、
火事ばかり探して消そうとすると、
本質からずれていく。
神経の再構築とは、
警報装置の感度を適正に戻す作業である。
ここを見誤ると、
刺激は“修理”ではなく“増幅”になる。
なぜ通院しても変わらないのか
強い痛み刺激が続くと、神経は変化する。
脊髄後角、視床、大脳皮質で
神経の感受性が亢進する。
これがいわゆる
中枢の過敏化(再構築) である。
この段階に入ると、
• 触れただけで痛い(アロディニア)
• 痛みの範囲が広がる
• 痛みの質が変わる
• 原因部位と痛みが一致しなくなる
という現象が起こる。
重要なのは、
痛みは組織損傷の量と比例しない という事実である。
組織が治っていても、
神経回路が過敏なままなら痛みは続く。
ここを理解しないまま
「もっと強く揉む」「もっと動かす」
を繰り返すと、逆に悪化する人が出る。
治りにくい人に共通する3つの特徴
臨床上、改善に時間がかかる人には共通点がある。
① 小さな変化に気づけない
痛みが10から3に下がっていても
「全然変わらない」と言う。
これは改善していないのではない。
脳が“変化を評価できていない”状態である。
人は「ゼロになること」を期待する。
少し軽くなった、は評価しない。
しかし神経の回復は、
階段ではなく“グラデーション”で進む。
小さな変化を拾えないと、
脳は「変わっていない」と学習してしまう。
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② 自分の状態を観察できない
「前回どうだったか覚えていない」
「忙しくて記録できない」
これは単なる性格ではない。
自己観察が弱いと、
前頭前野が働かず、扁桃体優位のままになる。
つまり、
痛み=危険
という回路が固定されやすい。
観察とは、
痛みを“自分そのもの”から切り離す作業である。
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③ すべて受け身
「何をしてくれますか?」
「治してくれますか?」
神経の再構築に必要なのは
• 酸素
• 栄養
• 刺激
である。
刺激とは
動くこと、触れること、意識すること。
受け身だけでは
神経回路は書き換わらない。
治りやすい人の特徴
逆に改善が早い人はどうか。
✔ 小さな変化を言語化できる
✔ 今日の状態を説明できる
✔ 痛みを客観視できる
✔ 指示された刺激を継続できる
特別な才能ではない。
だがこれが
神経の可塑性を動かす最大の要素 である。
なぜ“観察”が回復を加速させるのか
神経は入力がなければ地図を書き換える。
使わない指は、脳内地図で存在感を失う。
逆に適切な刺激を入れれば、地図は再構築される。
ミラーボックス療法や
イメージ運動が効果を持つのはこのためである。
さらに重要なのは、
変化を自覚すること自体が、脳に安全信号を送る
という点である。
「少し軽い」
「昨日よりマシ」
この認識が
過敏化した神経を鎮める。
期待値が高いと止まる理由
「一回で治るはず」
「この刺激なら変わるはず」
期待値が高いこと自体は悪くない。
だが神経は、
期待と現実の差を強く学習する。
わずかに良くなっていても、
「思ったほどではない」と評価すると、
脳は“失敗”として記憶する。
その積み重ねが、
「どうせ変わらない」という回路を強くする。
だから当院では、
ゼロを目指す前に
“変化を拾う”ことを重視する。
これは前向き思考ではない。
神経学的な戦略である。
当院が最初に行うこと
いきなり強い刺激は入れない。
まず行うのは、
- 末梢の問題か
- 中枢の過敏化か
- 瘢痕か
- 感覚消失か過敏か
の整理である。
そして必ず聞く。
「前回と何が違うか」
これは精神論ではない。
神経再構築のための戦略 である。
それでも変わらない場合
実は多いのが、
- 期待値が高すぎる
- 現状を正確に把握できていない
- 何をやっているか整理できていない
というケースである。
この場合、
治療よりも先に必要なのは
判断の整理
である。
今の状態はどこにあるのか。
何が過敏化しているのか。
どこまでを目指すのか。
ここが曖昧なままでは、
どれだけ通ってもブレ続ける。
通院回数の問題ではない。
年齢の問題でもない。
問題は、
- 神経がどの段階にあるのか
- 小さな変化を拾えているか
- 自分の状態を観察できているか
である。
神経は変わる。
だが放置すればネガティブに書き換わる。
適切な刺激と観察があれば、ポジティブに再構築できる。
もし今、
「どこに行っても変わらない」と感じているなら、
治療を増やす前に、
まずは今の状態を冷静に整理してみてほしい。
焦る必要はない。
方向が整えば、
回復は必ず現実味を帯びてくる。
