
痛みの出方には理由がある
「昔のケガがずっと痛む」
「何もしていないのにズキズキする」
そんな経験はないだろうか。
実は、これは “受容器”と呼ばれる体のセンサーが過敏になっている サインかもしれない。
受容器とは、皮膚や筋肉・関節・内臓などに存在し、
「熱い」「冷たい」「痛い」「引っ張られた」などの刺激をキャッチして脳に伝えるアンテナである。
受容器の働きが乱れると、本来なら一瞬で終わるはずの刺激が長引き、慢性的な痛みに変わることがある。
受容器の種類と具体例

受容器にはいくつかのタイプがある。
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熱受容器:43度以上で反応し「熱い」と感じる。熱い鍋をつかんだとき、一瞬で手を引っ込めるのはこのセンサーの働きである。
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冷受容器:15度以下で反応し「冷たい」と感じる。冷房の風に長時間当たったり、真冬に手袋をせず外に出たとき、手先が強く痛むのは冷受容器の過敏反応である。
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機械受容器:圧力や引き伸ばしに反応する。靴ずれで同じ部分がこすれ続けると痛みが強くなるのは、圧迫刺激が繰り返されるためである。
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サイレント受容器:普段は反応しないが、炎症や損傷が起こると働き始める。胃や腸に炎症があると腹痛が出るのは、普段は静かなサイレント受容器が刺激に敏感になるからである。
このように受容器は、私たちの生活と密接に結びついている。熱いお風呂に入ったとき「気持ちいい」が一線を超えると「痛い」に変わる。冷たい飲み物を急いで飲むと頭がキーンと痛む。これらはすべて受容器の反応であり、過敏になればより強い痛みとして感じてしまう。
刺激の“繰り返し”が痛みを長引かせる

本来なら一瞬の「熱い!」「冷たい!」という警告だけで済むはずの受容器。
しかし、同じ刺激が 繰り返し・長時間 入り続けると、センサーが過敏になり、痛みが持続してしまう。
例えば:
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クーラーや扇風機の冷風を片側だけ浴び続ける
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工事現場の騒音を長時間聞き続ける
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アロマを毎晩使い続け、ある日から頭痛に変わった
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長時間ソファに沈み込み、筋膜や神経を圧迫する
こうした「繰り返しの刺激」が、受容器の発火を強め、結果的に 慢性痛やめまい・頭痛を引き起こすのである。
痛みを強くする「受容器の過敏化」

受容器が過敏になると、次のような現象が起こる。
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弱い刺激でも「痛い」と感じやすい
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触っただけでズキッとする
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夜間痛(寝返りだけで痛む)が出やすくなる
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「熱い」「冷たい」がすぐ「痛い」に変わる
これは「感作(かんさ)」と呼ばれる現象で、神経や脳が痛みに対して過剰に反応している状態である。
つまり、受容器がエラーを起こして痛みのボリュームが勝手に上がっているようなものだ。
セルフチェックのポイント

では、受容器が過敏になっているかどうか、自宅で簡単に確かめる方法はあるのか。
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以前より「冷たい」「熱い」に敏感になった
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軽く触れただけでも痛みを感じる
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天候や気圧の変化で痛みが出やすい
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夜に痛みで目が覚めることが増えた
これらに当てはまるなら、受容器の過敏化が背景にある可能性が高い。
改善のためにできること

大切なのは「受容器を落ち着かせる環境づくり」である。
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長時間の同じ刺激(冷風・騒音・偏った姿勢)を避ける
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深呼吸で酸素を取り込み、神経と筋肉をリセットする
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軽い体操や散歩などの有酸素運動で血流を促す
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水分をこまめに摂り、循環を保つ
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室温や湿度を調整し、体が極端な環境にさらされないようにする
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お風呂に浸かり、筋肉と受容器をリラックスさせる
こうすることで、受容器の感度が正常化し、神経の過敏化が解除されやすくなる。
「圧迫」や「損傷」だけが痛みの原因ではない。
実は、体のセンサー=受容器が 刺激の繰り返しで過敏になっていることが、慢性痛の大きな背景である。
受容器の働きは、座り方や呼吸、冷暖房の使い方など、日常の些細な行動にも影響を受ける。
だからこそ生活習慣を整えることが、痛みを減らし、再発を防ぐための大切な土台になるのである。
当院では、皮膚・筋肉・神経の反応を丁寧にチェックし、受容器を落ち着かせるアプローチを行っている。
痛みが出にくい体へ導くためには、患者自身の生活習慣の工夫と施術による神経調整の両方が欠かせない。
→「同じ痛みが続いている」「原因がわからないのに治らない」方は、ぜひ一度ご相談いただきたい。
受容器のエラーをリセットし、体の本来の回復力を取り戻すことができるはずである。