• 患者：40代・女性・会社員／週1回のバレエレッスンを継続

• 主訴
  　右腰の痛み（バレエレッスン後から2週間継続）
  　右太もも前側の違和感、奥に響くような痛み
  　膝の曲げづらさ・感覚の左右差（特に寒さや屈曲時に悪化）

• 既往歴
  　腰椎すべり症（10年前）、子宮筋腫（手術済）

 「整形でも鍼でも変わらず、もうどこに行っても無理なのかと思っていました」  

触診・筋力検査の所見

• 圧痛・硬結：右鼡径部・右お尻の外側に明らかな緊張

• 筋力低下：大腰筋／腸骨筋／恥骨筋、中殿筋／大殿筋／梨状筋

総合判断による見立て

• 右腰の痛み：仙腸関節のズレによる靱帯の挟み込み＝仙腸関節炎

• 太もも前の違和感・膝の不具合：腸腰筋群の過緊張による大腿神経の圧迫＝大腿神経痛

つまり、この症例は「関節の不安定性」と「神経圧迫」が組み合わさって起きていたケースであった。

• 骨盤矯正 → 仙腸靱帯の圧迫解除 → 右腰の痛みは即座に消失

• 腰椎2か所の矯正 → 神経支配の正常化 → 多くの筋肉の機能が回復

• 中殿筋・腸骨筋へのキネシオテーピング＋筋スラッキング → 座位での違和感が完全消失

施術後、右腰の痛みはその場で消え、長く続いていた太ももの違和感も数回の施術でほぼ消失。膝の曲げづらさや寒さで悪化する感覚も改善し、バレエレッスンを再開できるまでに回復した。

患者は「どこに行っても変わらなかったのに、体がこんなに変わるなんて」と驚きと安堵の表情を浮かべていた。仕事中の座位での違和感がなくなり、長時間のデスクワークも集中してこなせるようになった。
また、買い物や家事で動いても不安を感じることが減り、生活全体に前向きな変化が現れた。

さらに、家族との外出や旅行でも痛みを気にせず楽しめるようになり、以前は避けていた長時間の歩行も自信を持ってできるようになった。
バレエ以外の趣味にも再び取り組めるようになり、生活の質そのものが大きく改善した。

今回の症状は「腰椎すべり症」とは直接関係がなかったが、大腰筋・腸骨筋の過緊張は“すべり症を引き起こす背景”にもなり得る。

さらに、普段の姿勢習慣──

• 右足を上に組む座り方

• 右に体重をかける癖

• 背骨の微細な歪み（胸椎・頸椎を含む）

これらが積み重なり、仙腸関節を不安定にし、腸腰筋を過緊張させていたと考えられる。

再発予防の提案

1. 骨盤の安定維持（座り方・荷重習慣の見直し）

2. 今回矯正できなかった胸椎・頸椎の調整

3. 関連する筋膜・筋の柔軟性回復
    

セルフケアの注意点

• 右足を組む座り方を避ける

• 長時間同じ姿勢をとらず、定期的に歩く・伸ばす習慣をつける

「整形外科でも鍼でも変わらなかった」症状でも、正しい見立てを行えば改善するケースは多い。原因が腰そのものではなく、神経と筋肉のバランスや姿勢習慣に隠れていることも少なくない。

特に今回の症例は、「痛みの出ている場所＝原因」ではないことを明確に示している。
腰が痛いからといって腰だけを治療しても不十分であり、全体のバランスを見てはじめて本当の原因にたどり着ける。この視点は、多くの患者さんに共通する学びになる。