【症例紹介9】「腕の付け根がピリピリする」——原因は“小円筋の緊張”による神経の引っかかりだった話（30代男性）

「押すとズーンと響く」「手を動かすとピリッとしびれる」
「腕の付け根あたりが、なんとなく常に気になる…」

そんな“はっきりした原因がわからない”しびれや痛みは、
実は“神経が通れなくなっているサイン”かもしれません。
今回は、構造を読み解くことで大きく改善した症例をご紹介します。

• 患者：30代・男性・会社員（元ボクシング経験あり）

• 主訴：

  • 右腕の付け根の痛みとしびれ

  • ドアを押す・手をひねる動作で悪化（特に外旋がつらい）

  • 安静時は比較的ラクだが、力を入れると一気に悪化する

• 経過：

  • 3ヶ月前に肩を動かした際に痛み発症

  • 徐々にしびれが出るようになり、1ヶ月後には右腕全体にしびれが拡がる

  • 整形外科で「四辺形間隙症候群」と診断／内服治療を続けるも改善せず

「姿勢の問題って言われたけど、薬では何も変わらなかった」
「ひねった時にだけズキンと来るから、原因が分からず不安だった」

• 触診で右肩後方に明らかな硬さと圧痛／押下でしびれ再現

• 筋力検査で棘下筋・小円筋の機能低下を確認

• 姿勢分析で右肩の前方突出（猫背＋内旋傾向）を認める

痛みのある“腕”ではなく、**「小円筋と棘下筋が神経を締めつけている構造」**が根本原因でした。

診断：

四辺形間隙症候群（Quadrilateral Space Syndrome）
小円筋の過緊張により、橈骨神経が圧迫されたことによる症状。

「筋肉をゆるめる」のではなく、
「筋肉が緊張せざるを得なかった“構造”を整える」ことを優先しました。

1. 小円筋・棘下筋にキネシオテーピング＋筋スラッキング
   　→ 圧痛としびれが即座に軽減

2. 頸椎と胸椎の歪みを矯正（各1箇所）
   　→ 右肩の内巻き姿勢が改善／再圧迫リスクを減らす

「ひねるとズキッと来ていたのがウソみたい」
「“奥からじわっと出ていたしびれ”が、静かに消えていく感じでした」

特に印象的だったのは、**“圧痛ポイントが消えた瞬間に肩の可動域が一気に回復した”**こと。
薬では届かなかった「通り道」が、物理的に再び開かれた実感がありました。

• 姿勢分析から見えてきた再発リスク：

  • 右肩の前方突出＝猫背による肩の内旋固定

  • 上肢の内巻き姿勢が小円筋に常時負荷をかけていた

• 再発予防に必要な対応：

  1. 今回未処置の腰椎・骨盤の調整で土台の安定性を高める

  2. 上背部～首にかけての筋膜ライン調整

  3. デスクワーク時の肩の位置／肘の支え方の再教育

「筋肉だけの問題」ではなく、
“構造全体が筋肉に何を求めていたか”を読み解くことが再発防止のカギです。

それは“筋肉”の問題ではなく、「神経の通り道」が詰まりかけているサインかもしれません。

「筋肉はゆるめたのに治らない」
そんなときは、**“筋肉がなぜ緊張せざるを得なかったのか”**という構造の視点が必要です。