―第40回キネシオテーピング学術臨床大会(東京開催)
参加レポート―
2025年5月18日(日)、日本青年館ホテルにて開催された 「第40回キネシオテーピング学術臨床大会」に参加してきました。
全国から約100名が集まり、研究発表とワークショップが一体となった 濃密で実践的な1日。
今年のテーマを一言で表すなら、 「貼る技術の再構築と、本質への回帰」
それぞれの臨床の現場から、“今ここで使える”工夫と、 “次の治療の軸になる”洞察が詰まった内容でした。
■ 個人的に最も印象に残った4つのセッション
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会長講演「流体筋膜動可法(その四 重力)」
“隙間をつくる”だけでは流れは起きない。 そこに必要なのは「流れる力=重力・筋肉・心臓・呼吸」の存在。
特に重力は、地球上で生きる限り避けられない、 絶え間なく身体に影響を与える力。
皮膚・筋膜・筋肉の滑走や流体の循環を、 テーピングと共に“動かす”には、この自然法則をどう活かすかが問われる。
「流体の滞りを避けるために姿勢が崩れ、そこに重力が加わるから腰痛などの問題が起きる」。 この重力に対する考え方は以前から何度か伺っていたが、今回の講演でさらに理解が深まりました。
原理から貼り方を考える姿勢に、テーピングの未来を感じました。
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北海道支部の野田先生「創傷治癒糧を促進するキネシオメディカルテープ」
筋膜と皮下の“流れ”に着目し、癒着や感覚異常に対して どのように空間と循環を回復させるか。
創傷治癒の生理学的過程と照らし合わせながら、 キネシオメディカルテーピングが単なる皮膚処置を超えて、 「治癒力を支えるアプローチ」として機能する可能性を再確認しました。
特に、“貼ることで持ち上げ、流れを作る”という考え方は、 今後の臨床にすぐ使える視点です。
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関東支部の石田先生「創傷治癒におけるKinesio Medical Taping」
術後やケガ後の癒着・瘢痕形成に対して、 ジェリーフィッシュテープやEDFテープを活用した症例を 経過写真と動画で丁寧に紹介。
癒着を防ぎ、皮膚と筋膜の滑走性を保ち、 “治ったはずの傷”に残る不快感に対応する——
そのアプローチには、 「治るのを待つ」のではなく、「治る方向へ導く」 という意志がありました。
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北海道支部仙波先生「こんなところに原因が・膝関節痛編 痛みの原因を探る②」
実際に壇上に上がり、モデルとして体験。
膝に症状があっても、問題は内臓疲労や姿勢のねじれから生じることもある。
問診や動作評価、腹圧・リンダーテストなどを通じて、 “膝には触れずに膝の痛みを改善する”という展開。
「見立て」がすべてを決めるという実感を得ました。
■ テーピングの“未来”を感じた時間
会の最後には、会長による総評もあり、 「温かい場を、学びの場に」という言葉が印象的でした。
治療技術としてのキネシオテーピングは、 今や筋肉や関節だけでなく、 皮膚、筋膜、神経、内臓、感覚までも対象とし、 その広がりと深まりを見せています。
そして何より大切なのは、 “どこに”“どう貼るか”ではなく、 “なぜ貼るのか”を問い続ける姿勢だと感じました。
今後もこの「問い」を臨床の現場で繰り返し、 患者さんの“治る力”を支える一助として、 この技術を磨いていきたいと思います。
アールカイロでは、単なる貼付処置ではなく、 生きた治癒のパートナーとしてのテーピングを、 これからも探究し続けていきます。