【症例紹介11】「足先が上がらない」──腰の痛みが消えても残った“つまずき”の正体(60代男性)

「足の力が抜ける感じがする」
「何もないところでつまづく」「足先がパタパタ音を立てる」

そんな“ふつうに歩けない感覚”が、実は神経の圧迫と腓骨のズレによって起きていた──
今回は、“腰痛が治ったあと”に残った症状に向き合い、大きな変化があった症例をご紹介します。

◆ 状況と背景(Before)

  • 患者:60代・男性・会社員

  • 主訴

    • 左足の足先が上がらず、歩行時にパタパタ音がする

    • 走る時・段差・床の小さな段差でもつまずきやすい

  • 経過

    • 約1か月前、腰痛で整形外科を受診 → レントゲンに異常なし/薬と湿布処方

    • 腰痛は整体・マッサージで改善

    • しかしその後も「足先が上がらない症状だけが残った」ため当院に来院

 

「腰の痛みはなくなったのに、歩くたびに足が引っかかるんです」
「足の感覚が変な気がするけど、検査では異常がないと言われて…」

◆ 見立てと考え方

  • 左足の背屈力(足首を上げる力)低下/関節可動域には異常なし

  • 神経学検査にて、足の甲・親指〜中指にかけて感覚異常あり

  • 筋力検査:親指の背屈力低下/腰を曲げると筋力回復

  • 触診:左大腿二頭筋・腓骨頭に圧痛としびれ反応

  • 筋力テスト:前脛骨筋・大腿二頭筋に機能低下

一見「筋力低下」のように見えたこの症状も、
“神経が通れない構造”と“腓骨のズレ”が重なった結果として起きていたものでした。
 

診断(総合的な見立て):

  • 椎間孔狭窄症(L4/5)による神経根圧迫

  • 腓骨神経麻痺(腓骨頭付近での圧迫/滑走不良)

◆ アプローチ

「筋肉を鍛える」のではなく、
「神経が通れる構造」「腓骨が動ける余白」をつくることを優先しました。

  1. 腰椎5番+骨盤の矯正 → 椎間孔の開放
     → 親指の背屈筋力が回復/歩行時に足が少し上がるようになる

  2. ウィリアム体操(神経根の圧除去運動)指導
     → 体幹主導の運動を習得・実施

  3. 大腿二頭筋+前脛骨筋にキネシオテーピング+スラッキング療法
     → 腓骨神経の滑走性が向上/足先がさらに上がりやすくなる

◆ 結果と変化(After)

「“あ、足がちゃんと上がってる”って歩きながら分かるようになった」
「親指の力が入る感じも戻ってきた」

“痛み”がないのに“動きにくい”
そんな不快な違和感が、神経の圧迫と腓骨の可動制限を整えることで明らかに変化していきました。

◆ 今後の方針と再発予防

  • 座位姿勢の分析結果

    • 右肩が下がり、左側のお尻〜太もも外側に荷重集中

    • 結果:左大腿二頭筋が慢性的に引き伸ばされていた構造

  • 再発防止に必要なこと

    1. 胸椎・頸椎の歪み矯正(今回は未処置)

    2. 骨盤と背骨の連動性を再学習するエクササイズ

    3. 長時間座位の調整・体重のかけ方改善

    4. ウィリアム体操の継続的な実施と段階的強化

 

構造が変わらなければ、神経は再び圧迫されます。
「良くなった」あとこそ、“何を続けるか”が最も重要です。

「腰痛は治った。でも、まだ足が思うように動かない」

それは“残された神経のサイン”かもしれません。

画像で見えない、動きでは気づかない、

でも確かにある“神経の圧迫”や“筋肉の引き伸ばし”に、
今こそ静かに目を向けてみませんか?

今回のように、「足先が上がらない」「つまずきやすい」といった症状の背景には、
神経の出口が狭くなる【椎間孔狭窄症】や、腓骨まわりの神経圧迫による【腓骨神経麻痺】が関係しているケースが少なくありません。

「歩き方が変だと家族に言われた」「つまずくのが怖くなってきた」
そんな方は、“動きのクセと神経の通り道”を見直すタイミングかもしれません。
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