【症例紹介22】「肩甲骨の内側がずっとゴリゴリする」──原因は“胸ではなく小さな筋肉のバランス”

30代男性・医師(週1〜2回ジムで筋トレ)

◆感じ始めた違和感

右肩甲骨と背骨の間に、ゴリゴリと固まったような鈍い痛み。
長時間座っていると悪化し、仕事が忙しい時には集中力まで奪われ、寝つきも悪くなる。
一方で、休みの日や運動をしている時には症状をあまり感じない。
思い返せば20年前からあり、ひどい時には手のひらにまでしびれが走った。

◆見立てと気づき

整体や鍼で一時的に軽くなることはあっても、根本的には変わらなかった。
レントゲンでは側弯があると言われ、その凸側に痛みが出るので「胸椎椎間関節症かもしれない」と思い込み、保存療法しかないと諦めていた。

しかし、姿勢を詳しく分析すると右肩甲骨が上外方にずれ、右肩が前に入り込んでいた。
触診では肩甲骨内側と胸に張りがあり、筋力検査では大菱形筋と下部僧帽筋、小胸筋に機能低下がみられた。
つまり、胸の前側の小胸筋が過緊張して肩甲骨を引っ張り、反対側の下部僧帽筋が伸ばされて痛みをつくり出していたのだ。

◆取り組みと変化のプロセス

胸椎と頸椎の歪みを矯正し、小胸筋と僧帽筋の働きを整えた。
再検査では大菱形筋と小胸筋の機能は回復。下部僧帽筋にはまだ弱さが残ったため、キネシオテーピング療法と筋スラッキング療法を加えると、肩甲骨内側や胸の張りは大きく軽減した。

◆伝えたこと・伝えなかったこと

症状が軽くなっても、筋肉が正常に働ける状態にならなければ再発する。
姿勢を改めて確認すると、右肩が上がり、上半身が左に捻じれた姿勢が習慣化していた。
この「姿勢に合わせて歪む背骨と、それに引きずられる筋肉」を正していくことが、再発を防ぐうえで不可欠。
特に今回はできなかった腰椎や骨盤の歪みを矯正し、連動する筋膜を含めた全体調整が必要であることを伝えた。

肩甲骨の内側にあった“ゴリゴリ”。
それは単なるコリではなく、胸の前後でつり合いを失った小さなバランスの崩れだったのかもしれない。
長年当たり前になっていた違和感が消えた時、体はどんな新しい感覚を思い出すのだろう。

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