【症例13】右胸の違和感と背中の痛み──検査では異常なし。けれど、確かに「そこにあった」負荷の連鎖

◆最初に感じていた違和感・不安

最初は「筋肉痛が長引いてるだけかもしれない」と思っていた。
トレーニング後に感じた右胸の張りが1週間、2週間…と消えず、
整形外科でレントゲン検査をしても「異常なし」。

湿布を貼っても、薬を飲んでも変わらない。
そうして1ヶ月、2ヶ月と経つうちに、背中まで痛くなってきた。
「筋肉痛にしては、おかしい」

症状があるのに検査では何も映らない。
そのことが、不安を少しずつ深めていった。

◆見立てと気づき

腕を動かさなければ痛くない。動かすと、胸や背中がピリッと反応する。
触れてみると、右の胸が左に比べて盛り上がっていた。
広背筋にも、明らかな緊張と張り。

力の出方を確認すると、大胸筋と広背筋の両方に機能低下があった。
けれど、その場しのぎで緩めるより先に、
「なぜ緊張していたのか」を丁寧に辿る必要があると感じた。

単なる筋肉疲労ではなかった。
背骨のわずかな傾きと捻れが、右側の胸と背中に“力を逃がせない構造”をつくっていた。

◆取り組みと変化のプロセス

背骨の歪みは、胸椎・腰椎・頸椎それぞれに1カ所ずつ。
構造全体のバランスを見て調整し、
過緊張していた筋肉にキネシオテーピングとスラッキングの刺激を入れた。

再検査をすると、大胸筋も広背筋も力が入り、張りが消えていた。
腕を回しても痛くない。本人も驚いていた。
「この3ヶ月間の悩みは何だったんだ…」と。

結果がすぐに出たことより、
“もうこの動きはできないかもしれない”と感じていた不安が、
静かにほどけていく過程が印象的だった。

◆伝えたこと・伝えなかったこと

伝えたのは、「症状が消えても、回復はまだ途中」ということ。
姿勢分析では、上半身の右への傾きと捻れが残っていた。
胸や背中の筋肉だけを整えても、また“そこ”に負担が集中してしまう。

今回は、あえて筋膜の深部までは触れなかった。
今の状態では、過敏に反応する可能性がある。
「いま必要な刺激」と「まだ触れない場所」の線引きを、説明と共に整理した。

再発しないためには、
“もう負担させない身体の使い方”に切り替えていく必要があることを共有した。

何度も繰り返していた“いつもの筋肉痛”が、
なぜ今回は長引いたのか。

それは、「いつもと違う動き」ではなく、
「いつもの構造の、崩れ方」が変わっていたからかもしれない。

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